「海業」(水産庁)推進中の愛媛・愛南町への視察訪問
- tsunemichiaoki
- 5月18日
- 読了時間: 8分
水産庁が推進する海業。
現在、全国で86の地区が推進に取り組む地区として指定され、その中でさらに12の地区が海業振興モデル地区となっています。
その内の一つ、愛媛県愛南町(あいなんちょう)
を訪問してきました。
愛南町で活動中の一般社団法人Umidas(うみだす)からのお招きです。
3日間で愛南町が有する様々なコンテンツ資産の内、海業推進において中心的なものになっていくと想定される数種のプログラムを視察させていただきました。
途中、急遽飛び入り、という形で愛媛の南海放送さんの取材、としてニュースとしての報道というびっくりハプニングもありましたが、好天に恵まれ、さまざまな価値がそこには内包していることを深く胸に刻んでくることができました。
(ニュース動画の視聴は2025年5月26日までになります)


愛南が有する貴重な海業コンテンツ
今回は、5つのプログラムにご案内いただきました。
石垣の里
養殖漁場見学
郷土料理体験&昼食
愛南漁協見学
ウニッコリー体験
単にその場を訪問しての見学ではなく、現地のガイドや実務をされている、経営をされている方からお話を伺うなど、とても素晴らしいプログラムを組んでいただきました。
それぞれもう少しご紹介していきます。
1.石垣の里
独特の家並みを形成するこの集落は 「日本の美しいむら農林水産大臣賞」や「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」にも選ばれています。
また平成19年(2007年)には、財団法人 古都保存財団の「美しい日本の歴史的風土100選」にも選ばれ、日本を代表する石垣文化の一大景観地となっています。
(愛南町役場ホームページより)
愛南町公式ホームページ/ 外泊(そとどまり)「石垣の里」



昔はこの石垣の奥に段々畑が広がっていたとのこと。 長い歴史の移り変わりを感じることができます。
2.養殖漁場見学
ヤマニ中田水産さんにお邪魔いたしました。
サバ、真鯛、シマアジの養殖現場に船で連れて行っていただき、給餌(キュウジ)の現場やお魚の管理についてのお話を伺ってきました。
いけすの中での養殖ですが、ただ単に餌をあげれば良いわけではなく、病気や死んでしまった魚は手作業で取り除いたり、網についた汚れも高圧洗浄機でこちらも手作業で(海の中に入って大型高圧洗浄機を使うそうです)清掃するなど、出荷までの長期間の管理、今日のような好天続きであればまだしも、荒天の際のご苦労は想像すらつきません。
また、真鯛は出荷前にはしばらくの期間、日焼けを防ぐために、いけすの上にシートをかぶせるそう。そんな単なる品質管理のレベルではなく、商品価値を上げるためのくふうもこらされている、ということなどは現地に行ったからこそ理解できることでした。


中田社長自らの操船かつ、ご説明もいただくことできました。
貴重なお仕事の時間の中、本当に長時間ありがとうございました。
3.郷土料理体験&昼食
愛媛県は真鯛の養殖では圧倒的な日本一。その中でも愛南は主要生産地です。
郷土料理体験では、当時朝6時に水揚げされたという立派な真鯛2尾をその場で調理していく、という体験をさせていただきました。
愛南漁協の女性部の皆様による貴重な体験プログラムです。

料理のできない私も何と真鯛の刺身づくりへの挑戦。
ほとんどは包丁の使える同行の(株)ヒナタデザインの大谷佳弘社長にしていただきましたが、「絶品」真鯛のお刺身の出来上がりです。



お刺身も当然ですが、漁協女性部の方々の手による煮つけまた美味しいという言葉ではとても言い表せないお味。
これほどの贅沢な食事があろうか、というものをいただき、全員が満腹になったお昼でした。
4.愛南漁協見学
次に訪れたのが愛南漁協。
以前にMEL審査でお邪魔したことがあるのですが、その時は閑散としてちょっと寂しい感じがあったのですが、今回は別世界。
まさにカツオ漁船の入港直後、という状況で、漁協の職員の方が総出で水揚げ後の作業をされておられました。

そのため、当初予定の方が対応できず、何と立花組合長自らのお出ましで、漁協の活動状況や地球温暖化による漁協への影響、更にが外国人労働者(技能実習生)の話まで伺うことができました。
敏腕経営者の組合長。
水揚げ、すなわち売上高の変動が本当に激しい、そのための経営の在り方、というところまで踏み込んで伺うことができ、現場の姿をかなり理解することができました。

その上で、極めつけというべきでしょうか。
組合長のところには政財界の大物、という方々が直接連絡してこられてお忍びのようにして楽しみ来られる、というカツオのたたきではなく、カツオの刺身をいただくこととなりました。
水揚げされたばかりのカツオです。
その中でも、持ってある動作をすると、そのカツオのおいしさのランク付けができてしまうそうで、組合長自らこれなら、と太鼓判を押された一尾を、すぐさま調理場に持ち込んで出来上がったのがこちら。

これがカツオか、と信じられない思いでした。
全員が真鯛の豪華ランチでお腹いっぱいの状態なのに、パクパクです。
スーパーで購入するカツオのたたきとは完全に別世界がここにはありました。
5.ウニッコリー体験
いよいよ最後です。
ウニッコリー。何のことやら、と言う名前ですが、
ウニ+ブロッコリー。
斬新な取り組みを考案されておられました。
ウニはお寿司屋さんでの高級食材、と思っていましたが、実は食材にならず、漁場等での厄介者扱いのウニが西日本各地で繁殖しているそうなのです(だんだん北上している状況)。
そのウニのせいで磯焼けが起こり、魚の住める環境が破壊されている、とのことで、駆除をしなければならない。それも手作業で。
通常の駆除は、潜って潰す、ということでしたが、ここ愛南では、そのウニを食べられるように加工しています。
そのウニはガンガゼウニ。
そのまま食べても全く美味しくない、ということで、なんとウニにブロッコリーを食べさせるのです。
その上、仕上げには愛南ゴールドという柑橘類を食べさせて味を調える。
それによって、苦み、えぐみがなくなる美味しいウニが出来上がる、という流れ。



実はわたくし、ウニは苦手で、お寿司屋さんで自ら手を出すことは全くありません。
ですから、今回はウニの身を取り出す体験は楽しむことができましたが、試食はちょっと心配、こわごわだったのです。
ですが、杞憂でした。
食べられる、どころかこれなら美味しいぞ、と言えるほど。
正直、手間はかかるので、生産量を上げるのは大変ですが、事業化を考える上ではとても良い材料がそろっている、ということがよくわかった体験となりました。

ここまでで今回の視察はすべてのプログラムが終了です。
都会での暮らしでは全くわからない、現地に来るからこそ感じられるものがふんだんにありました。
海は本当にきれい。
すぐさま飛び込んで泳いでみたいほどで、
愛南はダイバーにとってのとっても有名なところ、とのことで、いつかそちらの体験もできればな、と思いました。
いずれにせよ、水産庁の推進する「海業」。
もっともっと多くの人に知っていただき、日本が持つ大事な資源、ということを守り育てていく上での多くの方々のお力をお借りしたい、と思いました。
そして最後に。
今回お世話になった宿(山城屋旅館)のご主人にお聞きしました。
海業とは違いますが、
愛南にはお遍路さんも訪れ、その数は年間5~10万人。
まったく知らなかったのですが
お遍路さんに外国人がとても多くなっているとのこと。
お宿が観自在寺(四国八十八ヶ所霊場 第四十番)に近いこともあり、毎日のように外国人宿泊者が来られているそうです。
同宿の方々とはお話する機会はありませんでしたが、私の滞在期間中も日本人の数と同等レベルの外国人の方がいらっしゃいました。
インバウンドはそこまでになっているのだな、ということです。 これらも含めてコンテンツ資産としてのこの先の展開。 愛媛の愛南に少しでもご興味をお持ちいただければと思います。
一般社団法人Umidasの皆様
愛媛大学イノベーション創出院 南予水産研究センターの皆様
愛南町役場水産課の皆様
ヤマニ中田水産の皆様
愛南漁協の皆様
一般財団法人漁港漁場村総合研究所(漁村総研)の皆様
南海放送様
本当にお世話になりました。ありがとうございました。
(了)
P.S. Yahooニュースでも取り上げられています。 漁村の地域資源活用しにぎわい創出を「海業」観光ツアー開発へ視察(南海放送) - Yahoo!ニュース
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