アレンジ型研修実施のポイント—1日研修の限界と可能性(ISO研修講師日記Vol.14)
- tsunemichiaoki
- 5 日前
- 読了時間: 3分

今回は、ある大企業様でのISO内部監査員養成研修。定例開催の2日間コースではなく、お客様のご要望に応じた1日コースを複数回に分けて実施するという形式でした。
長年お付き合いのある企業様ですが、私自身が講師として登壇するのは今回が初めて。演習教材も、他社向けの汎用的なものではなく、同社の特質を踏まえたアレンジ教材で対応しました。
教材のアレンジは、セミナー会社としては基本動作とも言えますが、実はここが“曲者”でもあります。
現場に合わせた設計をしても、受講者の理解や応用力には個人差があり、ピントが合うとは限らないのです。
1日研修で本当に育成できるのか?
通常は2日間かけて行う内部監査員養成研修。果たして1日で実施可能なのか——。
結論から申し上げると、物理的には可能です。ですが、実態としてはまったくおすすめできません。
ISOの基本理解を深めたい方や、内部監査の知見を得たいという目的であれば、1日研修でも十分です。しかし、即戦力となる内部監査員を育成したい場合は、少人数での密着指導でもない限り、1日ではトレーニング量が足りません。
「セミナー会社としての力量不足ですね」と言われてしまうかもしれませんが、頭で理解することと、実際にできるようになることは別物。センスの良い方々ばかりでない限り、現場での育成には時間が必要です。
受講者の理解力と演習の壁
今回、私はこの1日コースのうち3回分を担当しました。他の講師の方がそれ以上の回数を担当されていますが、私の担当分だけを見ても、受講者の理解力はさすが大企業。知識面では非常に優秀で、理解も早い印象でした。
しかし、演習となると話は別。ピントが合わず、課題の消化に苦労される場面も多く見られました。
教材は同社向けにアレンジしているため、他業界の事例ではなく、同社の業務に近い内容です。それでも、実際の業務とは少し違う印象を受けることもあり、ピントが合いにくい、応用が効きにくいという課題もあります。
研修の本質と時間の壁
ISO研修の本質は、業種業態を問わず共通です。しかし、1日研修ではどうしても駆け足になり、受講者に十分に伝えきれたという手応えを得るのは難しいのが現実です。
研修の目的が「知識の獲得」なのか、「実践力の育成」なのか。この違いによって、研修設計は大きく変わります。
研修発注者へのお願い
毎回同じお願いになりますが、研修を検討・発注されるご担当者様には、ぜひこの点をご認識いただきたいと思います。
自社のニーズを明確にする
受講者に持ってもらいたい目的意識を整理する
その上で、研修会社に遠慮なく注文をつけていただく
そして、研修の現場をもっと見ていただき、受講者の状況にも関心を持っていただきたいのです。
当たり前と思われるかもしれませんが、実はこの部分には企業によって大きな温度差があります。
価値ある研修のために
せっかく貴重な時間と費用をかけて実施する研修です。そこから得られる価値を最大化するためには、研修会社だけでなく、発注側・受講側の協力が不可欠です。
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