ISOマニュアルを“現場の言葉”に翻訳する方法― 規格の言葉を、組織の日常業務と文化に落とし込む
- tsunemichiaoki
- 1月18日
- 読了時間: 4分

ISOマニュアルが形骸化する最大の理由は、「規格の言葉」と「現場の言葉」が乖離してしまうことです。
規格の条文は抽象的で、専門用語も多く、現場の従業員の皆さんにとっては“遠い世界の話”に聞こえてしまいます。その結果、マニュアルは「読むもの」ではなく「審査のときだけ出てくるもの」になってしまうのです。
では、どうすれば規格の言葉を“現場の言葉”に翻訳し、日常業務に根づくマニュアルにできるのでしょうか。
前回(ISOマニュアルのありがちな失敗例と改善策)からの続きになります。
1. 規格の言葉を「目的」と「行動」に分解する
ISOの条文は抽象度が高いため、そのまま書くと現場にはなかなか伝わりません。
まずは条文を 目的(なぜ) と 行動(何をする) に分解します。
例:9.1.2 顧客満足
規格の言葉:
「組織は,顧客のニーズ及び期待が満たされている程度について,顧客がどのように受け止めているかを 監視しなければならない。」
分解すると:
目的:顧客の声、満足度合いを確実に把握し、品質に反映、改善につなげる
行動:
電話・メール・対面での問い合わせ対応
クレーム受付と記録
顧客アンケートの実施
社内会議での共有
翻訳後のマニュアル例
「当社では、顧客の声を確実に把握し品質改善に活かすため、以下の方法で顧客満足の度合いを監視し、社内で情報共有を行う。
①問い合わせ対応(電話・メール)については帳票「お客様の声」に入力しサーバー内に登録する。
②クレーム対応(電話・メール)については帳票「クレーム受付票」に入力しサーバー内に登録するとともに関連部署に連絡を行う。
③営業部による半期ごとの顧客アンケート実施及びその情報を社内共有する。
④半期ごとに開催するQMS改善会議で、上記①~③の情報について議論検討する。
これだけで、規格の抽象的な言葉が、具体的な言葉に変わり、そのことによって現場が行動できるようになります。
2. “現場の言葉”を拾う
翻訳の鍵は、現場の担当者が普段使っている言葉をそのまま使うことです。
よくあるNG例
「顧客満足度の向上を図る」
→ 現場では誰もそのような言い方をしない
改善例
「顧客アンケートの結果をQMS改善会議で共有し、改善点を決める」
→ 現場の言葉で、行動が明確
現場の言葉を拾う方法
担当者に「普段どうやってる?」と聞く
ミーティングの会話をメモしたり議事録から吸い上げる
手順書やチェックリストを参照する
マニュアルは“現場の言葉の集積”であるべきなのです。
3. 「現場の困りごと」を起点に書く
規格を起点にすると抽象的になりますが、現場の困りごとを起点にすると具体的になります。
例:クレーム対応
困りごと:
「担当者によって対応がバラバラ」
「記録が残らない」
マニュアルに書くべきこと:
受付方法
記録の仕方
報告の流れ
再発防止の仕組み
規格の条文をなぞるより、現場の課題を解決する内容の方が、はるかに価値があります。
4. 図解・フローで“言葉の壁”を越える
文章だけでは伝わりにくい内容は、図解やフローチャートにすると一気に理解が進みます。
例:クレーム対応フロー
受付 → 記録 → 上長報告 → 原因分析 → 再発防止策 → 効果確認
フローチャートにするだけで、誰にとっても(つまり現場の人々)理解度が大きく変わります。
多少困難さが増しますが、図解ができればもっと理解度は上がる可能性があります。
昨今は生成AIを使うことで、フローチャートや図解は昔に比べると簡単にできるようになりました。活用してみましょう。
5. 「理念」と「現場」をつなぐ言葉を入れる
マニュアルは単なる手順書ではなく、組織の理念を“現場の行動”に翻訳するツールでもあります。
例 理念:「お客様に安心と信頼を届ける」
マニュアルの言葉:
「当社は『安心と信頼』を提供するため、クレームを“改善の種”として扱い、必ず原因分析と再発防止を行う」
何気ない表現とも言えますが、「必ず」原因分析と・・・と「必ず」が入ることで、会社の思いが確実にあちこちに伝わっていきます。
これがもし、「必要と判断した場合は」という枕詞であったとしたらどうでしょうか。
相当に趣が変わることはお感じいただけると思います。
思い、理念を踏まえてマニュアルの文言を決めていくことで、マニュアルが“組織の文化”をしめしていくことになります。
まとめ:マニュアルは「翻訳作業」で生き返る
ISOマニュアルを現場で使えるものにするには、規格の言葉をそのまま書くのではなく、
目的 → 行動 → 困りごと→ 現場の言葉 →(可能であれば)図解 → 理念の融合
という流れで翻訳することが重要です。
マニュアルは“規格の写し”ではなく、
組織の文化を言葉にして盛り込み、そして現場の行動を支えるツール
として進化させることができます。




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