ISOマニュアルと規程(一次文書・二次文書)の役割分担― 文書体系を整理すると、ISO運用は驚くほどラクになる
- tsunemichiaoki
- 3 日前
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ISO9001の運用で混乱が起きやすいポイントのひとつが、「マニュアル(一次文書)と規程(二次文書)の役割分担」 です。
多くの組織では、
マニュアルに細かい手順を書きすぎる
規程とマニュアルの内容が重複する
文書体系が複雑化して誰も使わなくなる
といった問題が起きています。
しかし、本来の文書体系を正しく整理すれば、ISO運用は驚くほどシンプルになり、現場で使いやすい仕組みに変わります。
1. 一次文書(マニュアル)の役割
マニュアルは、組織の品質マネジメントシステムの “全体像” を示す文書です。
マニュアルが担うべき内容
組織の品質方針・理念
品質マネジメントの枠組み(プロセス構造)
主要プロセスの関係性
仕組みの考え方(Why/What)
規程や手順書への案内(Where)
マニュアルに書かない方がよい内容
詳細な手順(How)
担当者レベルの細かい役割
記録の書き方
運用の細部
マニュアルは「全体像を示す地図」であり、細かい道順(手順)は書かない方が運用しやすくなります。
2. 二次文書(規程)の役割
規程は、マニュアルで示した枠組みを “組織として具体的にどう運用するか” を定める文書です。
規程が担うべき内容
プロセスごとの具体的手順、ルール
権限・責任の明確化
運用の基本方針
手順書や記録の管理方法
是正処置などの細かい仕組み
規程の特徴
マニュアルより具体的
組織としての「統一ルール」を示す
規程は、マニュアルで定めた基本を現場に落とし込むための “橋渡し” の役割を果たします。
そして業務になれた人にとってはマニュアルを見るよりもはるかに規程を見る機会のほうが多くなります。
3. 三次文書(手順書・記録)の位置づけ
今回の主題ではありませんが、体系理解のために触れておきます。
三次文書は必ず存在するものとは言えません。中小企業であれば、マニュアルと二次文書で整理を終えて、三次文書は作らない、という方針で運用することももちろん構いません。
文書体系もできるだけシンプルなほうがよいからです。
しかし大企業となるとそうはいきません。まず間違いなく三次文書にまで展開しておかないと運用管理ができないでしょう。そのあたりはそれぞれの組織の規模や管理のスタンスに応じで決めていただきたい部分です。
手順書(How)
現場が実際に作業するための具体的な手順
担当者レベルの行動を明確化
組織によっては「作業標準」「業務手順書」と呼ばれる
記録(Evidence)
手順が実行された証拠
内部監査や審査で確認される“事実”
三次文書は、一次・二次文書の内容を よりいっそう現場で細かい作業をしていくための実行可能な形に落とし込んだもの です。
4. 文書体系が整理されると、教育・運用が劇的にラクになる
文書体系が混乱している組織では、
マニュアルが分厚くなる
規程と手順書が重複する
更新が追いつかない
現場が文書を使わない
という問題が起きがちです。
しかし、役割分担を明確にすると、次のような効果が生まれます。
✔ マニュアルは「理念と全体像」だけに集中できる
→ 教育研修で使いやすくなる→ 新人が全体像を理解しやすい
✔ 規程は「組織の実際業務の明示化」に集中できる
→ 内部監査で確認しやすい→ 組織としての統一運用がしやすい
✔ 手順書は「こまかい現場のやり方」に集中できる
→ 現場が改善しやすい→ 更新が容易になる
文書体系が整理されると、ISOは“書類の山”ではなく、組織文化を支えるシンプルな仕組み に変わります。
5. 審査員視点:文書体系の整合性は「運用の質」を映す
審査員は、文書の量や形式ではなく、一次 → 二次 → 三次文書の整合性 も見ています。
審査員が確認するポイント
マニュアルの内容が規程に反映されているか
規程の内容が手順書に落とし込まれているか
手順書の内容が記録として残っているか
文書体系が現場の実態と一致しているか
文書体系が整理されている組織は、審査でも「運用が管理している」と評価されやすくなります。
まとめ:文書体系は“組織の言語体系”
ISO文書体系は、単なる書類の階層ではありません。組織が品質をどう考え、どう行動し、どう改善するかを表す“言語体系” です。
マニュアル(一次文書)は理念と全体像
規程(二次文書)は組織の業務の枠組み
手順書(三次文書)は現場のやり方
記録は実行の証拠
この役割分担が明確になると、ISOは「書類のための仕組み」から“文化を育てる仕組み” へと進化します。




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