「また来て欲しいと言ってもらうために」(ISO9001審査員日記Vol.10)
- tsunemichiaoki
- 3 日前
- 読了時間: 7分

今回は審査チームリーダーの審査方針から大きな学び、気づきを得たお話です。
審査は通常、複数の審査員がチームを構成して実施されます。顧客組織が少人数であれば一人の審査員で完結してしまいますが、100名を超えてくる社員がいる企業であれば、2人、あるいは3人でチームが構成されることになります。
リーダーが持つ権限
審査チームにおいては、リーダーの采配が全てです。
メンバーはたとえ意にそぐわないことであっても、意見を申し述べることは出来ますが、審査が始まればリーダーの指示に従わなければなりません。
たとえそれが、主任審査員の資格を持っている方であったとしても、メンバーとしてチームに参画する場合は同じです。
私の場合は、まだ主任審査員の資格を持っているわけではありませんし、リーダーからいろいろな面で指導を受ける、そして評価される立場ですので、基本的にはおとなしくしていないといけません。
そのようなところで悪い印象を持たれることは百害あって一利なしです。
そして今回は、そのリーダーの指示に従うことによって得た新たな体験と知見についてのお話となります。
美点発見トレーニング
今回のリーダーから出された審査にあたってのリーダー方針は、「組織の良いところをどんどん引き出そう」、でした。
ISOの審査は適合性審査ですから、美点発見となると少々逸脱と言うか、本来すべきことが疎かになるリスクを抱えた審査になるのでは、とまずは私の頭の中には心配が思い浮かびました。
理想論としてはわかる。
でも本当にそれがうまくいくのか。
やってできなくはないだろうが、適合レベルでの事象確認は出来たとしても、美点というレベルのものまで本当にやっていてくれるか、という感じの心配です。
ただし、一つそのチャレンジをしても大丈夫かな、という背景はありました。
何かというと、
今回の審査は、
サーベイランス
だったからです。
これが3年に1回の更新審査であったとしたら、本当にそのような対応ができたかどうか、審査が終わった今、想像を巡らせてみる中で、もしかすると、という思いは若干ですがあります。
サーベイランスは言い方を変えれば期中の進捗確認です。
最終着地の確認とは違いますから、多少の冒険もできる、ということになります。
とは言え、です。
さあ、このリーダーの方針通りするには、自分はどのような審査をすればよいか。
審査前日に少々考えさせられることとなりました。
頑張っている!
今回のリーダーから方針及び指示を聞いた際の私の直感は、「んっ、ちょっと難しくないか?」
というものでした。
なぜなら、
よいところは、なかなか自分では自覚できていない可能性
があるからです。
自分の長所は自分ではわからずに、他者から言われて初めて認識できた、というケースは多くの人が経験していることではないかと思います。
故に、自分でも自覚認識できていないことを初対面の人間が本当に浮き上がらせることができるか。
そして、
今回の審査における審査計画は、多数の部署をまんべんなく、いずれの部署も短時間で回るように、という指示になっている審査計画です。
特定の部署でじっくり時間をとって審査を進められるのであれば、自覚できていない強みを浮かび上がらせることもできるだろうが、1時間程度の短時間では・・・、ということなのです。
悩んだ末に出した自分の結論は、
冒頭に問いかけをして、この部分のきっかけを作ろう、というものでした。
どのような問いかけか、というと、
「頑張っていることを教えてください!」
というものでした。
基本的には審査を受ける組織の方々は皆さん全員が頑張っていることが何かしらあります。
それを審査開始の冒頭にすぐさま聞いてしまう、ということ。
答える側の方も、結果が出ている、いないに関係なく、ISO認証取得企業のレベルであれば、管理職層であれば頑張っていることの一つや二つ間違いなくありません。
理想は頑張っている中でも、人様(他部署等)に自慢できることを聞き出したいな、と思ったのです。
答える側の心の壁が崩れる問いかけ
ISO審査は、審査員と被審査者はほぼ間違いなく初対面です。
初対面の二人の間に通常生まれるものはなんですか。
そう、それは緊張感です。
互いが、固まってと言うと極端ですが、少なくともリラックスして打ち解けている雰囲気はまったくと言ってよいほどない、ということです。
そこから和やかな雰囲気を作っていく必要があるわけですが、
そこにも今回の切り出し方はとても役に立ったのです。
人間誰しも、いきなり初対面の人に、ちゃんとやってるか、という感じで詰められたら嫌な気持ちになりますよね。
それが、
頑張っていること色々あると思うので、教えて!
という感じで入るとどうなるか。
もう想像していただけることでしょう。
それだけで十分に和やかな雰囲気になる、というものではさすがにありませんが、間違いなく役に立ちました。
そして頑張っていることを聞く、というのは結果が出ている、出ていないに関係ないことでも含まれるからです。
更に他者から頑張っているね、という評価ではなく、自分の中で頑張っていると自己認識できているものであれば教えて、ということですから、言えるものの範囲は相当に広く考えてもらえるはずです。
さらに、自分でも予期しませんでしたが、そこから実はポイントを探り出していく次の質問への展開がとてもしやすくなる、というおまけも付いてきました。
頑張っていることには多くのケースで結果、途中結果の資料が登場します。
そしてそれは目標ともつながってくることがほとんどです。
自然と目標管理の話につなげていける、というおまけだったわけです。
あくまでまだ1回の試行です。
とても効果的と断言するのはさすがに早すぎます。
ですが、この切り口からの審査で今回こちらとして出すことが出来たお土産は審査時間から考えれば十分な量になりました。
ここで言うお土産は、報告書に記載する検出事項ということです。
ただし注意いただきたいのは、審査の狙いは不適合指摘をたくさん出すことでは決してありません。
上記でもたくさん不適合指摘を出しました、とは記していません。検出事項が色々あった、と記しました。この両者の違いを理解いただくことは審査の世界の話としてとても重要ですのでお気をつけください。
もしどのような違いかさっぱりわからない、ということであえば、個別レクチャーをさせていただいても構いません。
さて、話を元に戻しますが、審査の価値の一つとして、組織が前向きな気持になれる検出事項をできるだけ多く出すこと、と私は考えています。
もうちょっと頑張れば、あなたの会社は良くなるはずですよ、という思いを両者が持つことができる検出事項ですね。
審査にまた来て欲しい
今回の審査で何件の検出事項を私が残してきたか。
それはここでは記しません。
でも1件だけであればこのような記し方はしないことだけは書いておきますね。
そして最終会議が終わって後片付けをしている際に、今回かなりの審査に同席されていた工場長から
こんな感想をいただくことになりました。
「色々と今回の審査は楽しかった。またこの先も審査に来て欲しい」
とてもありがたいお言葉でした。
「また来て欲しい」は本当にありがたい言葉です。
ただし、
現場の方々はどのような印象、心象であったかはじつはわかりません。
ですが、管理する側、経営する側からすると、自分たちの日頃の対応で目が行き届いていない部分にメスが入り、それも受けから目線で押し付けられたものではない、自主性、主体性を引き出す状況になってくれれば、審査の価値を感じてくれるはずです。
その思いをどうやら工場長は感じ取ってくださったようです。
そのきっかけは、今回のリーダーの良いところを探し出して報告書に書いていく審査をしましょう、という方針表明でした。
Sさん(リーダー審査員)、貴重な気づきをありがとうございました。
そしてN工場長、ありがたいお言葉をありがとうございました。
最後に『今回のひとこと』



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