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ハーモニー経営って何だろう(2)「響かせ合うこと」

  • tsunemichiaoki
  • 11月26日
  • 読了時間: 8分

更新日:7 日前

ハーモニー

第2話 縦割り組織を超える部門間ハーモニーの作り方



―“連携の文化”が企業の未来をつくる―


多くの企業で、成果を妨げる最大の壁は「外部競争」ではなく、社内の分断です。営業と生産、技術と品証(管)、経理と現場――それぞれの部門が自分の目標を追ううちに、組織全体の調和が崩れてしまう。その結果、情報は閉じ、人のつながりが薄れ、判断は遅れ、協力すべきところで摩擦が生まれる。


この弊害は、どんなに優れた戦略や理念を掲げても、現場ではしばしば壁となって立ちはだかります。


ハーモニー経営は、こうした構造的分断を乗り越えるための考え方です。今回は、部門間の“ハーモニー”を実現するための実務的アプローチを紹介します。




縦割り組織が生まれる理由


多くの組織は機能上、「部署が分かれている」ことで仕事をうまく分担しています。

大きな企業になれば、多数の部署が存在し、それぞれが責任をもって業務を遂行しています。それは組織運営にとって必要なことではあります。

しかしながら、「縦割り」という言葉はネガティブな意味で語られることが多いのも事実です。


この際に語られる内容のポイントは「分断」です。

もう一歩踏み込めば、目的と価値観の共有が途切れることにあります。


各部門が自部門のKPIや成果目標を追うあまり、全体最適よりも部分最適が優先される。組織が大きくなるほど、意思疎通のコストが上がり、情報の断絶が起こるリスクが高まると感じる方も多いことでしょう。


特に、ISOのマネジメントシステムを導入している企業では、「役割分担の明確化」が逆に硬直化を招くことさえあります。


結果として、

  • 他部門への理解が乏しく、協働に抵抗感が生まれる

  • トラブルが起きても自部門でできることに積極的に取り組まない

  • 「自分の仕事はここまで」と線を引く文化が強まる

ということが生まれます。


こうした現象が重なれば、組織は“音の合わない合唱団”になってしまいます。




部門間ハーモニーを生み出す3つの鍵


1. 共通目的の“再認識”


部門間の連携を生む第一歩は、全員が共通して目指す「企業の目的」に立ち返ることです。

経営理念やビジョンは、企業の「存在目的(Purpose:パーパス)」を示すものです。


たとえば、「お客様の幸せを支える企業であり続ける」という経営理念は、企業の“なぜ存在するのか”を定義しています。



この目的を出発点として、「経営方針」が策定されます。目的を実現するために、どのような価値を提供し、どの方向に進むのかという“進むべき道筋”を具体的に明確化する段階です。


たとえば、方針として「顧客価値の最大化を図る」という方向性を掲げた場合、この方針に基づいて各部門は“自部門の行動”に落とし込んでいきます。


  • 営業部門:顧客の生の声を体系的に収集し、全社で共有する仕組みを整える

  • 技術部門:顧客要望を踏まえた設計改善や新製品提案を行う

  • 品質部門:クレームを再発防止の機会と捉え、プロセス改善を推進する



このように、「目的」→「方針」→「目標」→「行動」という一貫した流れを設計することで、部門の役割と貢献の方向性が明確になります。


共通の目的が明確になると、各部門は“自部門の成果”を上げるためには当然のように他部署との協力関係の構築が必要であることの再認識が起きてきます。その結果、コミュニケーションがより生まれるようになり、結果として“全社としての成果”をともに考える度合いが今までより確実に強まります。

その結果、これまで部門ごとに限定して考えていた目標や評価指標が、全体最適の視点に再構成されるのです。



たとえば、営業部門が「契約件数」だけを追うのではなく、技術部門や品質部門と協働して「顧客満足」という共通の成果を目指すようになります。


目的が共有されると、他部門を“競争相手”ではなく、“価値を共創するパートナー”として認識するようになり、自然と情報共有や連携が促進されます。

この変化こそが、縦割り組織の弊害を超える鍵です。

壁を壊そうと力で押すのではなく、上位目的の共有によって、部門同士が自発的に橋をかけ始める──これがハーモニー経営が引き出す組織が本来持つ力の発露問うことにつながります。



2. 情報の“響き合う場”をつくる


ハーモニーを生み出すに部署同士のコミュニケーションを増やす、ということはその第一歩ですが、単に会議体を設けるだけでは不十分です。


必要なことは、異なる部門の“音”が混じり合い、響き合う場の設計です。


具体的には:

  • 形だけの会議にしないために、管理職層が積極的に参画する

  • 会議では“報告”ではなく“対話”を大事にする

  • 成果だけでなく、課題・失敗も率直に出せる心理的安全性を担保する

  • 人同士のつながりが持てるように杓子定規な会議運営にしない


会議運営の効率化は多くの組織にとっての課題ではありますが、一方で効率化を追求しすぎると、紋切り型の会議になってしまい、ゆとり、遊びがまったくなくなり、人間味がなくなります。限度はありますが、わずかな時間でも、例えば会議前の数分の時間を使い、プライベートな会話をするなどの工夫が必要です。


また、間違ってもよいから発言したことを認めるなどの心理的安全性の確保も大事なことです。


どれもありきたりの簡単なことですが、人の心はこのようなことがあるからこそ和みます。そしてここから響き合う場が生まれるのです。



3. 人を介した“橋渡し役”を育てる


仕組みだけでなく、人同士のハーモニーも欠かせません。部門間の調整役の存在とまずは考えてください。ただし、調整役が担うのは、単なる「連絡係」ではありません。

サッカーに例えるなら、監督の指示を待つのではなく、ピッチ上で状況を読み、互いに連携しながら最適なプレーを選択できる有能な選手のような存在として考えてほしいのです。


経営層(監督)が理念と方針という「戦略」を示す一方で、現場(ピッチ)では各部門のリーダーや中堅層がその意図を理解し、臨機応変に連携しながら全体最適を実現していく。

このような「自律的連携力」を持つ人材こそが、縦割りを越えて組織全体のハーモニーを生み出す推進力となります。


  • 他部門の事情を理解し、利害の違いを調整できる人材

  • 調整ではなく、“共創”の視点で話を進められる人材

  • 現場を尊重しながら、経営視点で物事をつなげられる人材



いずれの視点も同じ日本語同士でありながらコミュニケーションギャップが生じてしまっている部分の橋渡しができる人材の存在が大事になります。そしてその人材のしていることは、相手に通じるように言葉を翻訳している、という役割もあります。技術者の言っていることを営業マンにもわかるように言い換えてあげる、ということなどがここでお伝えしたい翻訳の意味です。


そしてこの通訳を大事にする意識をそれぞれの部署の管理職層が持つこともポイントの一つになります。簡単そうで意外と難しいこの通訳という役割が果たせる人をしっかり評価することも必要です。理想を言えば、階層ごと(役員、管理職、一般社員それぞれで)にこの通訳ができる人がいることが理想です。


この人材の活躍が縦割り構造を破壊することにもつながり、組織内のハーモニーをより一層響かせることにつながります。



ただし、そのような人材はなかなかいるものでもなくまた、育成も簡単にできるものでもありません。その育成には、


  • 部門横断プロジェクトへの参加機会

  • 他部門とのジョブローテーションや現場見学

  • その役割をまっとうできるようになっていく指導者の存在


など、実践の場において“全体で考える意識づけ、場の経験、適切なフィードバック”を行い続けることが効果的です。


こうして現場が「理念の理解者」から「理念の実践者」へと成長すると、組織全体が指示型から自律型へと変わっていく。

それこそが、ハーモニー経営が目指す理想的な姿です。




ハーモニー経営における実務的アプローチ


ハーモニー経営を単なるスローガンで終わらせないためには、具体的なマネジメントプロセスへの埋め込みが重要です。


  • 内部コミュニケーションの仕組みの見直し

   → 確実に行われる場の設定。その上でその場が形だけにならないように工夫する。

  • 方針管理や会議資料に“プロセス/横ぐし”を設定

     → 他部門とのつながりを常に意識できるようにあらゆる場、資料を活用する。

  • 教育体系に“協働力・対話力”を組み込む

     → 研修を単独受講型から、異部門混成チーム形式に変更。

  • ISO内部監査に“部門間協働”の観点を追加

     → 「この業務は他部門との連係がどのように行われているか?」を必ずチェック。


これらはすぐに導入できる“静かな革命”です。制度を整えることで、ハーモニーが文化になる下地が生まれます。




ハーモニーがもたらす組織の変化


部門間に調和が生まれてくると、会議の質が変わります。


  • 「自部門の報告」ではなく「全体最適への提案」が出るようになる。

  • 他部門を“ライバル”ではなく“仲間”と見るようになり、現場の士気が高まる。

  • 顧客対応力の変化につながる。

  • 営業と技術、品証と製造などが一体で動くことで、クレーム対応のスピードが上がり、信頼が積み重なる。


これらの「内部ハーモニー」が、「顧客とのハーモニー」へとつながるのです。





まとめ:ハーモニーは“共鳴”から始まる


縦割りをただ単に敵視するのではなく、響かせ合うことがハーモニー経営の本質です。部門の個性や専門性は、消すのではなく、調和させる。そのために必要なのは、仕組み・場・人を通じた“共鳴の設計”です。


🎵 ハーモニー経営とは、部門の壁を越えて「組織として一つの音楽」を奏でること。企業の未来は、その響き度合いによって決まります。



(つづく)


第3話~第6話


ハーモニー経営

第3話 ハーモニー経営って何だろう(3)「響き合いがつくる文化」 はこちらから





前話

ハーモニー経営

第1話 ハーモニー経営って何だろう? こちらから






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