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ハーモニー経営って何だろう(4)「対話がつくる信頼」

  • tsunemichiaoki
  • 11月26日
  • 読了時間: 6分

更新日:7 日前

対話

第4話 経営層と現場をつなぐ「見える対話」



現場に届かない「経営メッセージ」


「経営方針は毎年発表しているのに、現場の動きが変わらない」。多くの経営者が、そんなもどかしさを抱えています。しかし、現場の社員に話を聞くと「言葉は聞いたけれど、具体的に何をすればいいのか分からない」と返ってくる。


実はこの「認識のズレ」こそが、組織を動かないものにしてしまう根本原因です。経営陣は方向性を語っているつもりでも、現場にとっては“抽象的な理想の話”に聞こえてしまう。その結果、「自分ごと化」されず、日常業務の中で埋もれていくのです。


経営メッセージが浸透しないのは、決して社員の理解力の問題ではありません。

「伝えたつもり」のまま自己完結してしまう、経営側の努力不足にこそ原因があります。

現場が理解できないということは、伝え方の設計に課題がある――。


その自覚を持つことが、真の対話の出発点です。




「見える対話」とは何か


「見える対話」とは、単に情報をオープンにすることではありません。経営層と現場のあいだで、理解と意図が可視化される双方向のコミュニケーションを指します。


経営会議で決まった方針や目標を、文書やプレゼン資料で共有するだけでは、一方通行の伝達にすぎません。見える対話とは、それを「どう受け取ったか」「どう行動につなげるか」を現場の言葉で確認し合うプロセスを含んでいます。



たとえば、ある企業では方針発表の後に、各部門が自分たちなりの行動テーマを策定し、その根拠を経営層に説明する場を設けています。経営側は「現場がどう理解しているか」を“目で見て確かめる”ことができ、現場は「自分たちの言葉で方針を語る」機会を得ます。


このやりとりの往復こそが“見える対話”の本質です。




「理解されないのは、努力が足りない」という発想の転換


経営者の中には、「何度も説明しているのに伝わらない」と嘆く人がいます。しかし、現場が理解できないということは、「経営側の伝え方が届いていない」ということです。

つまり、それは現場の問題ではなく、経営側の課題なのです。


経営層が「理解してもらえない」と言う前に、「なぜ伝わらなかったのか」「どの言葉が届かなかったのか」を振り返る。この姿勢があって初めて、組織の信頼関係は動き出します。



たとえば、経営会議で使う専門用語をそのまま現場に下ろしても、社員には意味が通じません。「利益率の改善を目指す」と言うよりも、「同じ材料で無駄を減らし、次の改善に回せるようにする」と置き換える。抽象語を現場語に翻訳する努力が欠かせません。


経営が“わかりやすく伝える”ことを怠ると、現場は「またお題目だ」と感じ、信頼が薄れます。逆に、経営が「分かってもらえなかったのは自分たちの努力不足」と受け止めると、メッセージの質は劇的に変わります。


言葉の伝わり方が変わると、組織の空気が変わるのです。




対話が生まれる仕組みをデザインする


「見える対話」は、自然発生的には起きません。仕組みとして設計しなければ、忙しさの中で埋もれてしまいます。

効果的なのは、定例的な“方針共有ミーティング”を仕組み化することです。


そのうえで大事な一つのポイントは、経営が話す時間より、現場が話す時間を多くとること。現場の意見や疑問に対し、経営がその場で補足説明や再解釈を行う。これにより、双方の認識が「その場で一致する」経験を積み重ねられます。


また、経営層が現場に足を運び、そこで行う対話も有効です。資料説明ではなく、その職場で今、起きていることを経営者が自ら感じ、そしてその現場に経営理念、方針を落とし込むにはどのような工夫をすればよいかを自らが考える。そして社員と向き合う。


経営が聞き手に回ることで、現場の言葉が方針にリアリティを与えます。この双方向のやり取りが、「見える対話」を現実のものにしていきます。




「聞く」から始まるリーダーシップ


経営層がよく誤解しがちなのは、「自分の考えをしっかり話すことがリーダーシップだ」という認識です。


もちろん方針を明確に打ち出すことは大切です。しかし、聞く力のないリーダーシップは、共感のない独演会に終わってしまいます。



現場が語る「現実の言葉」を受け止め、それを方針の中にどう位置づけ直すか。この姿勢が「共に考える経営」を形づくります。

社員は、自分たちの声が経営に届いていると感じた瞬間、方針を“自分のもの”として受け止め始めます。


対話とは、理解を強要する場ではなく、信頼を更新し続ける場なのです。




組織が変わる瞬間


経営と現場の信頼関係は、特別なイベントで築かれるものではありません。むしろ、日々のコミュニケーションの中で「経営がどう向き合っているか」を社員が感じ取ることで育っていきます。


たとえば、経営会議で決定した内容を、わかりやすい形で社内に共有し、その内容について現場から質問や意見を受け付ける機会を設けるだけでも、空気は変わります。



経営層が一方的に話すのではなく、「どんな点がわかりにくかったか」「どんな懸念があるか」を聞き取る姿勢を見せる。このようなやり取りの積み重ねが、社員に“対話できる会社だ”という安心感をもたらします。



さらに大切なのは、経営側が自らの説明不足を認める勇気です。「意図が伝わっていなかった」「この言葉は誤解を生んだ」と正直に話すことで、社員は“本気で伝えようとしている”と感じ、対話の熱が生まれます。


対話とは、どちらかが勝つものではなく、互いが少しずつ歩み寄るものです。「理解できない」と突き放す経営では、組織は硬直します。


組織が変わる瞬間とは、経営が完璧に語れたときではなく、“伝わらなかったことを自覚し、もう一度語り直そうとしたとき”なのです。





まとめ:見える対話が信頼を育てる


経営方針を伝えるとは、単に情報を下ろすことではありません。

理解できる形で共有し、受け止め方を確認し、共に行動を設計していく――。この往復のプロセスこそが、「見える対話」の真価です。


経営が“伝えた”ではなく、“伝わった”をこと確認する。


理解されなかったら、もう一度言葉を探し直す。その粘り強い姿勢が、現場との信頼を積み重ねていきます。


見える対話とは、経営が「上から語る」のをやめ、「隣で語る」姿勢を持つこと。その一歩が、組織を静かに、しかし確実に変えていくのです。




🎵 ハーモニー経営とは、対話をベースとして、人と人がつながっている経営です。




(つづく)

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