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審査の奥にある本当の価値とは?(ISO9001審査員日記Vol.11) 

  • tsunemichiaoki
  • 2 時間前
  • 読了時間: 7分
審査



前回、ある審査で最終会議終了後の工場長のコメントについて記しました。

また来て欲しい、と言われる審査とはどのようなものか、ということを考えてみましたが、そう言ってもらえる審査は審査のパフォーマンスとしてはOKと言えます。


ですが、ふと冷静になって考えると、それよりもさらに大事なことがあることに気づきました。ある意味お褒めの言葉をいただいた。それはそれでOKなのですが、それで喜んでいるようでは、という話です。


ふと考えて何を思ったかと言うと、

自分がその組織の経営者であったら、それで十分満足できたか、という意識、視点です。


結論から言うと、悪くはないけど・・・。

なのです。


どういうことか。




その審査で悪くはないけど・・・


この次に来る言葉は何か。

審査としてはOK何だけど、やっぱりISOの審査だよね、

という言葉です。


ISOの審査は規格に基づく適合性審査です。

どうしても限界があります。


でもその限界内にとどまっていれば、経営者からすれば、まあそんなもんだよね、だから部下に任せておけばいいな、という判断も当然出てきます。


事実、今回の組織は、社長は初回会議も最終会議も出てこられませんでした。

理由は全くわかりません。


社長が審査の範囲外であれば出席は不要ですが、今回の組織では、社長は認証範囲の中です。

にも関わらず、初回会議も終了会議も出てこない。

これは審査機関側にも問題があると言わざるを得ません。


経営者インタビューの時間は本部長格の役員の方が一手に引き受けて回答されていました。

今回の審査では、私自身の割当はそこへの同席ではなく、別の部門審査でしたので、経営者インタビューの内容は一切わかりません。


社長が初回・最終会議に欠席となっても審査自体の成立、という意味では問題ありませんが、実効性を考えると少なくともどちらかには出席しないことには、その後の経営成果につなげる、という意味では不安が残ります。



さて、この問題はここまでにして、本題に戻ります。




経営者に考えてほしいこと


今回の審査では検出事項をいくつか残してきました。

その点を含めて工場長は評価をしてくださったわけですが、それだけで本当に良いか、という意味では私の中にはやはり物足りなさが残ります。


どういうことかと言うと、何度も同じことになるのですが、ISO審査は適合性審査が基本です。

規格要求事項に関して出来ているかどうかを評価判定する、という行動が基本です。


そしてその行動が出来ていなければ不適合指摘。出来ていたとしても効果性などの面で気になることがあれば観察事項/改善提案ということになります。




今回の審査では、製造業で製品の最終検査を行う部門審査が最後に割り当てられており、そこでは事務所内だけではなく、短時間ですが現場審査も行いました。

そこでは女性社員の方が立ちっぱなしで作業をテキパキとこなされていました。

そして検査で問題になる部分を素早く見つけ、マーキング等の識別管理を適切に行い、作業をどんどん進めておられました。

集中力を要する仕事です。


もくもくと仕事をこなす姿には頭が下がる思いでした。

製造業の現場ではよく目にする光景とも言えますが、その場面を同社の経営者が見たらどのようなことを感じるか、考えるか、という思いがもたげてきたわけです。



一生懸命仕事をしている社員の方には、お疲れ様、ありがとう、引き続きよろしくね、という声をかけることになるでしょう。


ですが、経営者にとっての本質はそこではありません。

それはそれで現場での品質管理、品質維持、という意味ではとても大事なことで、そこが揺らぐと会社の基盤が崩れることになってしまいますが、それは現場責任者に任せても大丈夫、と思える部分のはずです。


経営者が考えるのはその一段上の部分。


この社員にはいつまでこの仕事をしてもらうのが良いのだろう。

この仕事は、やはり人手をかけないと無理な仕事だろうか。

この仕事から会社の成長をつなげるにはどのような工夫をすればよいのだろう。

生産性を上げる糸口はどこかにあるのだろうか。

機械化を更に進める、ロボットの導入の可能性はどうなのだろう。


というような視点です。




会社の成長のために


会社を成長させるために考えることは、大きく分ければ下記の3つの視点です。


①     売上を拡大する

②     コストを削減する

③     革新する


この3つのどれかあるいは組み合わせを考えるわけですが、3番目の革新はやはりそう簡単にできるものではないので、まずは1つ目と2つ目です。


今回見た現場では、


①の基本は稼働時間の増大です。

しかしすでに夜勤のある24時間体勢をとっているので、それ以上は不可能です。では生産性を上げる事ができれば道はあります。例えばある作業に10分かかっているのが9分でできるようになれば生産性は約10%アップということになります。大きな貢献ですね。


②のコスト削減は、例えばある仕事はこれまで時給2,000円の方にお願いしたが、これを時給1,800円の人にお願いして問題なくできる状況であれば、これも10%のコスト削減で、そのまま利益アップということになります。



私からすればこういった質問、議論を最もっとしたいのですが、マネジメントシステム審査ではそこまで踏み込むと本来の審査目的からどんどん逸脱していってしまいます。

若干はできるわけですが、それは前段の規格適合性を踏まえたうえでのプラスアルファの審査ということになっていきますので、時間が必要です。


少なくとも今回の審査ではその時間は全く取れない計画でした。



最終検査をその現場では人による目視確認で行っていましたが、人がする作業であればどうしても見逃しが起きるリスクはゼロには出来ません。では機械に置き換えることができるか。同社では来年の導入に向けて検討中とのことでしたが、画像認識、画像処理のレベルはどんどん上がっているとは言え、まだまだ限界があるでしょう。人間同様あるいはそれ以上を、製品に合わせて本当にできるか。まだまだ技術の進化を待たなければならない部分もあるはずです。


では短絡的に人件費を下げるためのアクションをして、目先のコスト削減を図っても、その分、質が低下して不良が増し、損失コストが増えたり、顧客満足が下がったり、ということになってしまえば本末転倒です。


3番目の技術革新は、検査ロボットの導入でガラッと世界は変わる可能性はあるものの、現状のロボット技術ではその検査工程での導入は私には全く想定できませんでした。


また、工場内は所狭しと様々な設備が導入され、何も置かれていないスペースを見つけることは困難でしたので、新規に設備投資をして売上増大を狙う、という戦略も取れそうにありません。


そうなるとどのような経営戦略を考えるのか。

会社の将来をどのように作り出していくのか。


社員の皆さんに明るい未来をどのように提示していくのか。

経営者の苦悩はそのあたりにあると感じるのですが、短時間の審査ではどのようなところの意見交換の時間はほぼありません。


ランチを共にしながら意見交換ということであればまだ議論の機会はあるでしょうが、現実は全くそのような場、時間にはなっていません。




理想の審査とは


今回の中で感じた私にとっての理想の審査は、そのような観点にまで踏み込む、そして刺激を与える審査を現場審査でもできる、というものです。


上記の内容は、トップインタビューあるいは、管理責任者の時間の中でするのが実態としては精一杯でしょう。

現場を預かる課長さんクラスでは、日々のオペレーション対応に手一杯で、そのような視点まではとても対応しきれない、というのが多くの企業の実態です。


ですが、そこは諦めずに、審査員側は現場審査で投げかけ続ける必要があります。

その力量を審査員側も持つ必要があるわけです。



その会社、その部門の現状が問題ないという適合性審査をしたうえで、将来に向けての伸びしろを探り出す、引き出す審査とでも言えばよいでしょうか。


そのためにも、組織の方々にも、適合性審査のレベルはパッパッと審査進むように日頃のオペレーションレベルは上げて頂く必要もあります。


今回の審査でも目標展開、目標感においては穴が多くて、そのやり取りに時間を要してかなりの時間を費やさざるを得ない状況に遭遇しました。


つまり、まだマネジメントシステムの運用力の基礎固めが必要であった、ということになります。



ぜひこのような問題意識を共有いただき、少しでも審査の価値を高いものにする、これは審査をする側受ける側両方の努力があってこそできるものです。


この拙い文面ではなかなか伝わらないかもしれませんが、一人でも多くの方に審査に使うお金の価値をより高いものと感じていただける世界を実現したいものです。






最後に『今回のひとこと』


📌適合性審査の奥にあるものこそ審査を受ける本当の価値!








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