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ISOマニュアルの存在価値(ISO研修講師日記Vol.10)

  • tsunemichiaoki
  • 8月19日
  • 読了時間: 5分
ISOマニュアル

今回は特にISO9001に取り組む企業様にとってしっかり考えていただきたいテーマである品質マニュアルについて取り上げます。

ご存知の通り、附属書SLの登場により、各規格の整合度は一気にアップしたため、多くのユーザーの方の利便性、活用価値は大きく上昇したと思いますが、一方で、それに合わせて運用の仕方を変えた企業様において、頑張って取り組みはしたものの、本当に改善につながっているか?と心配なケースも出てきています。


その一つがマニュアルの取り扱いです。

研修でそのことに直面しましたので、差し障りのないレベルで記したいと思います。



ISOマニュアルは必須ではない


まず、規格要求事項からすれば、マニュアル作成はすでに求められなくなりました。

今まで、マニュアルを作成し活用されていた企業が品質マニュアルを廃止したからと言って、それだけで問題になります、指摘されます、ということでは全くありません。


あくまで審査上は、ISO9001規格の各要求事項が何らかの形で充足していれば、問題なくパスできます。



今回縁のあった企業様は何度か講師対応をさせていただいている企業様でした。そしていつもその会社のマニュアルをお借りし、それを踏まえて規格の解説を行っていた取引先です。


その相手先に同じ研修コースのご提供ということで今年も巡ってきた機会でした。

結論から申し上げると、マニュアルの大胆な改訂を行っておられ、それによって、残念ながら運用管理レベルの低下が大きく懸念される状況になっていたのです。


以前のマニュアルは、事務局がしっかり工夫して、堅苦しい、かつピントの合いにくい規格要求事項を自社の言葉に置き換え、展開していました。マニュアルをお借りして研修を行う企業様の中でも、よく考えておられるな、と上位ランクと思える工夫を凝らされていました。

普段その会社の皆様が業務で使っている言葉があちこちに登場するため、使い勝手のよい、勉強する価値のあるマニュアルと感じていたわけです。


そのマニュアルが今回、品質&環境の統合マニュアルとして全面リニューアルされていました。

その狙いはチャレンジングで素晴らしいものなのですが、実は結果として、研修における活用価値という面では疑問が生じる状況になってしまったのです。

どういうことかと言えば、自社独自にアレンジしていた部分がなくなり、規格要求事項のオウム返しマニュアルになり、その会社の特色がマニュアルからでは読み取れない物となってしまったのです。



残念



これはやはり残念でした。

失礼を顧みず申し上げるとISO離れを引き起こしてしまうだろうな、と思わざるを得ないものでした。


とは言え、研修コース提供中に、マニュアル改訂批判をしても意味も価値もありません。

幸い先方の事務局も研修実施中、同席してくれていましたので、やんわりと事務局の方には次の改訂を考える必要性とその方向づけを意識していただけるような言葉を意図的に挟んでいきました。



結果としてその日の終了時点で、先方事務局から反省の弁に近いようなコメントを頂くことができたので、こちらの意図は理解してもらえたと思い、ホット一息。


その段階で聞いてみました。


第三者審査ではこの部分、なにかツッコミは受けませんでしたか?と。


返ってきた返答は、何もコメントなしだったというもの。

ちょっとこれにはびっくりでした。


繰り返しになりますが、マニュアル作成は、規格要求事項から外れていますから、何も作成されていなくても指摘にはなりませんし、作らないと、という言うアドバイスも当然NGです。


しかしマニュアルを大幅に改訂した効果がどの様になっているか。

PDCAサイクルがどのように回っているか、というのは審査員としては当然必要な視点です。

マニュアル改訂のビフォーアフターに関しての質問はあるべきです。


その点を含めて、マニュアル改訂に関して、被審査側の受け止め方として、審査ではノーチェックだったという心象になっている点はどう考えてもいただけません。


いずれにせよ大事なことはユーザーの方にとって、その文書がどのように業務推進上、役立っているかということです。



マニュアルが存在する価値



マニュアルが

・業務推進上、意味あるもの、活用できるものとなっているか。

・マネジメントシステム推進における教育訓練に役立てられているか。


仕事の進め方で迷いが生じたときに参照する大元の文書がマニュアルです。

そのマニュアルに基づいて、細かい規定である2次文書に展開していく、つまり文書体系を構築していくのが基本です。


マニュアルはISOの規格要求事項上は作らなくても認証を受けるうえでは問題にはなりません。

しかしながら、マネジメントシステムの運用管理においてはやはり大事すべき文書です。このマニュアルで組織のマネジメントシステムをどのようにコントロールするかの設計ができると言っても過言ではありません。


マニュアルがなくても運用はできますし、認証取得もできますが、本当に実効性が高まるかどうかは、よくよく考えてみていただきたいところなのです。


規格要求事項のオウム返しマニュアルではその存在価値は残念ながら高まる可能性は低いのです。そのようなマニュアルであれば不要ですよね、という意図も含めて、規格からマニュアル作成の要求事項がなくなったということも意識していただきたいのです。




最後に『本日のひとこと』


■ISOマニュアルには運用管理の思いを込めよう!



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