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ハーモニー経営って何だろう(6)「音を活かす仕組み」

  • tsunemichiaoki
  • 7 日前
  • 読了時間: 8分
仕組み

第6話 ハーモニーを生む仕組み──マネジメントシステムの再設計



経営層が「ハーモニー経営」を理解し、取り組もうと考え、その方針を打ち出しても、組織そして現場を動かす仕組みが旧来のままでは、お題目として唱えただけで終わってしまいます。


そこで重要になるのが、理念や文化を支える仕組みとしての、マネジメントシステムの有効活用(あるいは再設計)です。



1.形式的な仕組みから“響き合う仕組み”へ


これまである程度の年数、事業を継続してきている組織にとっては、日々この業務を誰がする、というパターンはかなり定型化しています。そして日々だけでなく、季節ごとにこの業務は行う必要がある、ということもほぼ確定している状況です。

順調に経営が行われているともいえるわけですが、見方を変えると、マンネリ化のリスクが徐々に高まっているとも言えます。


例えば多くの企業で運用されているマネジメントシステム――品質のISO9001や環境のISO14001など――は、整然とした枠組みを持ち、一定の品質や安定性を保証するうえで大きな役割を果たしてきました。


しかし一方で、その運用が「ルール遵守」や「証拠づくり」に偏り、現場にとっては“管理されるための仕組み”と感じられてしまうことも少なくありません。

決められたことをやっておけばよい、という風土を生み出す遠因になっている、ということです。


本来、システムとは「人がよりよく働けるように支える仕組み」であるべきです。


そのステージに差し掛かった組織においては、マンネリ化のリスクを摘み、新たな成長ステージに入るためにも、経営理念やビジョンと現場の行動が響き合うように、仕組み(システム)そのものをハーモニーの視点で見直すことが求められます。




2.再設計の第一歩は「目的の再定義」


再設計の出発点は、「何のためにこの仕組みがあるのか」という目的の明確化です。

たとえば、品質マネジメントの目的を単なる「顧客満足」から「顧客と共に価値を創る」に転換する。

このわずかな言葉の違いが、会議の議題も、改善活動の方向性も変えていきます。


目的を再定義すると、これまで“やらされ感”で運用していた仕組みであったとしても、“自分たちの成果を生む道具”として理解されるようになります。

これは、ハーモニー経営における「共通の旋律」を作る作業ともいえます。


オーケストラでの演奏時に、開始前に音合わせをするシーンは多くの方がご認識のことと思います。まさにあの過程と同じと考えてください。


先に挙げたISOの認証取得についても同様の視点での見直しが必要かもしれません。

ISOの認証を取得するために、組織の仕組み(システム)を整える作業を多くの組織では実施しています。それによって、一段高い管理の仕組みが出来上がったのであれば素晴らしいことなのですが、認証取得が目的と化し、とにかくそれに対応した仕組みにする、という状況の組織もあちこちに見受けられるのが現実です。


その組織が本来持っていた良さが、ISO対応の仕組みに変えたことによって、見えなくなってしまう、あるいは消えてしまう、ということも起きています。それではISO対応が害となってしまうといっても過言ではありません。


ISOの認証取得はあくまで組織経営を考え、レベルを上げていくうえでの手段です。

「何のためにこの仕組みがあるのか」という目的の明確化への意識を明確に持ちましょう。




3.現場がよい音色を奏でる仕組みをつくる


再設計のもう一つのポイントは、「現場の声を反映した仕組みづくり」です。多くのマネジメントシステムは上位方針から作るわけですが、日々業務を動かしているのは現場の人々です。


どれほど立派な仕組みを作っても、「本社が決めたから」「ISOで決まっているから」という理由で動かしているうちは、現場は本当の意味で納得していません。この「やらされ感」を変えるには、現場の声を踏まえた仕組みを作りPDCAを回していくことが第一歩になります。


もともとPDCAは、現場の改善を支えることを主眼とした考え方でした。ところが特にISO認証を取得した多くの企業では、次第に「書類上で回すPDCA」ことを示すことに注力するようになってしまったのです。


会議の議事録を残せばPlanとDoが済んだことになり、監査の指摘に対応すればActが終わったことになる――そんな形骸化した運用を、現場では少なからず目にします。

では、どこから立て直すか。答えは、“Plan”と“Do”で終わらせない、“Check”と“Act”を形式で終わらせないことにあります。



たとえば、月例ミーティングで「計画どおり進みました」と結果だけに着目して終わらせるのではなく、「なぜ計画どおり進んだのか」「どの部分が特に効果的だったのか」というところまで突っ込んで意見交換をする。

失敗があった場合も、「誰のせいか」ではなく、「仕組みとして何を見落としたか」を共に考える。


その場を単なる報告会から、次の一手を考える“対話の場”に変えていくのです。

この小さな転換が、現場を活かすことにつながります。


現場の担当者からすれば、最初は面倒に感じるかもしれません。しかし、自分たちの意見が次の何か反映される体験を重ねると、

「どうせ決まっていることをやるだけ」から「自分たちで良くできる」へと意識が変わっていきます。


この意識の変化こそが、ハーモニー経営の基礎です。

そしてそれを経営として認め、そして尊重していくのです。


経営と現場がつながる瞬間でもあります。



経営層に求められるのは、「PDCAを意識しなさい」、「PDPDにならないようにCheckをしっかりしよう」というような指示をすることではありません。


現場が自分たちの言葉でPDCAを語れるようになるまで、見守り・支援する姿勢を持つことです。

このサイクルが定着すれば、会議や監査の場も、単なる報告や確認の時間ではなく、課題を共有し、未来を描くための対話の場へと変わっていきます。


仕組みを整えることよりも、仕組みを通じて人が動く手応えを作る。

それが、現場でよい音を奏でる仕組みづくりの要なのです。




4.形式を整えるではなく、中身を重視する


ハーモニー経営においては、形式的な運用は排除しなければなりません。そのためにも一人ひとりが「意味を理解して動く」ことができるようになることを目指します。


「自分は何のために働くのか?」

「自分が目指すものは何なのか?」


という自問自答です。


一人ひとりの生きる目的と言ってもよいでしょう。

この目的と、組織の目的の合致度合いが大きくなればなるほど、組織の力は強くなります。

組織一丸となって動ける組織になれる、ということです。


その認識を横において、形だけの対応となってしまえば、一人ひとりの力を存分に発揮してもらう、ということから遠ざかることはおわかりいただけるでしょう。


例えば、ISO認証取得企業であれば、例えば、内部監査やマネジメントレビューといった仕組みも、「規格要求だから実施する」のではなく、

「互いの仕事の価値を確かめ合う対話の場」として、経営陣自らが組織の目的とのつながりの再設計を図る必要があるということです。


簡単に言えば、内部監査等に経営者がしっかりと興味関心を持つ、ということです。人は着目されることにより、やる気増大につながるものです。何よりも嫌なことは無関心です。経営者が内部監査に無関心であれば、監査員の方々のモチベーションが上がらないことは容易に想像できるでしょう。

この再設計を進めることで、やらされ感が減り、取り組む人々の意識が変わっていきます。


そしてその継続によって、組織内に浸透し、組織全体でハーモニーが響き合うようになっていきます。

こうした“意味づけの転換”が、同じことをしていても結果が変わる力を生みます。


形はあえて極論として申し上げるならば、どうでもよいことなのです。

ISOの認証も同じです。認証を取得する、しない、という議論ではなく(極論すればどちらもよいのです)、何のために認証を取得するのか、あるいは不要と判断するのか、という意味合いが、しっかりとした経営判断に基づいて行われ、そして組織内に伝わっていることこそがポイントです。その整理に基づいて、社内に存在している仕組みを必要に応じて変えていくことです。



再設計が一度で完了するかどうかはわかりません。

逆に一度では完結しない可能性が大、と思って取り組むほうが良い可能性もあります。


組織の成熟度次第、ということになりますが、ここは急いては事を仕損じる、という言葉を思い出しながら、一気に変えるべき部分と、徐々に変えていく部分の識別をしたいものです。


ハーモニー経営とは、制度そのものを変えるのではなく、制度の中に共感と目的が響きあう場を見つけ、そして取り組むことなのです。




5.ハーモニー経営を支えるマネジメントシステムへ


マネジメントシステムの再設計とは、単に手順を見直すことではなく、組織の価値観に改めて目を向け、そしてそれを社内外に明確にしていく作業から始まります。


理念という「楽譜」を、仕組みという「譜面台および舞台設定」に載せ、現場である「奏者」が自らの音を響かせる――。


その仕組みが整ったとき、企業は単に効率的に動くだけでなく、人と組織が一体となって“響き合う経営”を実現できるようになります。




まとめ


🎵 ハーモニー経営を支えるのは、音を揃える技法ではなく、

  音を活かす仕組みです。





<これまでお届けした内容>


仕組み

第5話 ハーモニー経営って何だろう(5)「常に響き合う」 はこちらから



仕組み

第4話 ハーモニー経営って何だろう(4)「対話がつくる信頼」 はこちらから



仕組み

第3話 ハーモニー経営って何だろう(3)「響き合いがつくる文化」 はこちらから



仕組み

第2話 ハーモニー経営って何だろう(2)「響かせ合うこと」 はこちらから




仕組み

第1話 ハーモニー経営って何だろう? はこちらから






 
 
 

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